かなりの昔話。20代前半、ガードマンのバイトをやってました。
まだ携帯電話が一般的じゃなくて、ポケベルとかあった頃だ。東京テレメッセージとか懐かしいっすね。PHSとかもあったね。伝言ダイヤルとか。
工事現場で立ってれば金がもらえる楽な仕事って認識ではじめたバイトだったし、実際そうだった。
しばらくは一般道の工事(水道管なおそうねとか舗装とか)をやってて、そのうち高速道路の仕事に誘われた。
高速手当というのがついて金が良くなるので、程なく高速道路専門のチームに入った。
立ってれば終わるようなものではなくて、だいぶ様相の違う仕事だった。
見たことあるでしょ、車線を狭めて工事してるやつ。あそこで旗振ってる人を3年位。
工事現場を設置し、警備し、工事車両の出入りをコントロールし、現場を片付けて撤収する仕事だ。
自分の真横を100km/hで車が飛んでいく。よろけたら死ぬ上、知らん誰かの人生を台無しにする。
命が安かった。
そのくせ現場の認識は「ガードしてるだけ」なので地位が低い。
法律で決まっているから仕方なく置いてる、くらいの扱いだ。現場監督も作業員も、ガードマンをいっこの人間としては見てない。
もともと工事現場の設置・撤収のスピードは他社の数倍速かったこともあり評判が良かったが、便利な奴らくらいの認識でしかなかった。
何人かと相談して、地位向上を図ることにした。
ダンプカーの出入りの際はデッキブラシでタイヤの泥を落とし、ポッカの差し入れで懐柔し、現場の横をパトロールで通る道路公団や警察(覆面も全て見分けていた)にまで敬礼やらをすることで覚えもめでたく、まわりまわって道路公団から監督に評判が届きはじめたとかで、だいぶ扱いが変わった。
わたしを含む何名かは天気の予測が得意で、雨天の疑いがある日は降雨までの時間を監督にアドバイスし、作業のボリュームを調整してもらうことがあった。この予想は気持ち悪いくらい当たっていた。
薄曇りの朝、テレビの天気予報を無視して「今日は昼までに降ると思うんで仕事しないほうがいい」と進言して工事を中止させたのは今でも不思議だ。
雨は降った。
雨が降ると舗装用のアスファルト(現場到着時には100℃近いのが理想)が冷えてしまい、舗装の品質が下がる。あまりにひどいと再工事になって損失が出るので、天気予報は重宝されていた。
今はもうこの能力の片鱗すら見ることがない。
あれはいったい、なにが研ぎ澄まされていたんだろう。