
Netflixでやってた。内容何も知らないし、絵柄は好きだなーってくらいのかんじで見始めた。
一言で言うとかなりわたしの好みの映画だった。演出は美しいし、扱っているテーマも良かった。物語の流れも自然で、ああ、だから、なるほどな、って感じたまま終われた作品だった。
物語の類型はたくさんあるとおもうんだけど、別にいいじゃんかそんなの。これが面白かったら文句ないのだ。
ただ、なんでわたしはこれが好きなんだ? バーチャル空間みたいなやつがでてくるからか? 歌のシーンのパーティクルが美しかったからか?
いやーなんか違う、なんだろう。
(特に気に入った)エンタメを摂取したあとの感想を言語化するのヘタクソなので適切に言えるかわかんない。ものは試しだ。
割と意地悪な映画なんじゃないかと思った
気に入った映画の感想がこうなるのw?
うーん、意地悪というのとは少し違うのかな。映画内のデジタル空間であるところの「U」のキャッチコピーが繰り返し使われるから、あれは色々と象徴的なものなんだと思う。
「さあ、世界を変えよう」
みたいな。
実は世界は1ミリも変わってはない。あの映画の中にあるUの住人は何も変わらない。新参者を奇異の目で見てカジュアルに叩き、やがてそれがウケ始めたとなると、自分が叩いていたことも忘れて拍手喝采を送る。
Uにログインする何十億の人々は、ご都合主義の共同幻想を浴びるポルノ中毒者の集まりでしかない。それは映画の始まりから終わりまでずっとそう。徹頭徹尾、安全な遊びに浸かっているグロテスクな背景として存在している。
虐待を受けていた子供ふたりが助け出されはした。主人公の鈴もなんか救われた感じがして、彼女の周りは少し優しくなった。
でも世界じゃないし、ましてやUではない。
Uの出来事を通して、自分のリアルの変革に成功した人がいたよという物語だ。
「さあ、世界を変えよう。お前は変わらないけどね」があのキャッチコピーの省略なしの姿なんだろう。
で、映画を見てる大抵の人は、そうじゃん。
よく知りもしないものを気分で叩き、手のひらを返し、感動したと叫んでは自分が物語の一部になったように錯覚する。
あの有象無象の価値のない吹き出しはみんなの事だよと見せつけていながら、美しい物語を見せ、ねえ感動するんでしょって絵を投げかけられているような、そんな感覚になったというか。
メタ感動ポルノなのかよやばいなこれ、っていうのでわたし感動したんだわ。
たぶん。
で、賢しらにメタ視点で珍説を開帳するわたしみたいな半端者が湧いて「私は気づきましたけどね」みたいに言わせるポルノでもあるんだろう、みたいな。
なんだこれ。構造が美しい。
褒めても貶しても地獄なのよこの映画。
すごくないですか。
