ごくごく稀に、大変ラッキーなことに、10年以上昔の「ホームページ」と呼ばれていた時代の文章やら、それらの断片やらが見つかることがある。時にはGoogleのキャッシュという形で。
色々記憶が蘇る。案外思い出せるものだと感心する。

ブリ銀前で出くわして変な挨拶をしていた人々。
たまにベスパーに行くと無駄に並んでひなたぼっこをしていた面々。
いつデシートに行っても殺し合いを延々としている彼ら。
嫌なやつだと思ってたけど話の通じるやつだった彼。
いいやつだと思ってたけど実はつまんない男だったあの人。
可愛らしい人だなーと思ってたらネカマだったあいつ。
戦士。魔術師。生産者。PK。FPK。CPK。シーフ。それと本気で頭おかしい人たち。
年を追う毎に役者の粒は小さくなっていったけれど、飴玉と石ころと宝石をぎっしり詰め込んだ箱に自分も入って遊んでいたのは間違いなかった。

あいつらの影はない。もう気配も。
あたしと同じように立ち去ってどっかに行き失せたんだろう。

とある銀行前のとある1マスは、誰かが声高に主張する必要もなく、とある一人が立つために存在した。既に誰かがそこにいたとしても、その一人が現れた途端にその場を空けた。空いたその1マスに立った彼女はいつもどおり、焼き魚を売り始めた。

恐ろしげな名前を持っていながらベッタベタの変な喋り方をし、その割にどこかでややこしい人格の影をにじませつつ、どこで集めたのか大量のブーツで木のオブジェをつくる名人がいた。

生き様にとことんまでこだわり、こだわり続け、己の信じる道を歩こうとし続けた人物がいた。数値の有利不利を語られるのを嫌っていた。彼が大事にしているのは性能とか、そういうことではなかった。

大悪党がいた。彼を倒すことは至難の業で、仮に倒れても直後にサーバが落ちるなんていう”不思議”な出来事が起きた。奇妙な技をいくつももち、追うものを幻惑させた。

Pitの真ん中に死体の山を積み上げ、血まみれのハルバード一本を肩にかけ、王者のごとく君臨する決闘屋がいた。死体の山の中に彼の名前はひとつもなかった。

なんだかキラキラした超充実ライフを送る芸能人が、日々PKやWarをし、本気で怒り本気で笑っていた。ゲームやること以外、とくに日々の楽しみがなかったあたしとは違った。あんたみたいな人でもゲームやるの?よく思ってた。仲良くなったりもめたりした。

ダンジョンでよく出くわす男がいた。虚ろな目でこちらを一瞥すると、何事もなかったように間抜けな獲物の懐に狙いを定めていた。油断していると秘薬や武器を抜き取られていた。

否定か肯定かすら判然としない変な挨拶をする”見物人”がいた。正体は判然としなかったが、彼に悪印象を持つものは誰もおらず、常に悠々とあたりを漂う、そんな人物だった。

あたしは彼らと同じ空気を吸い、同じ風景をたまには見て、彼らとは少し違う方法で世界をさまよって、ふらふらと、ふらふらと、湿った落ち葉みたいに飛ばされたりどこかにくっついたりしてた。

あの世界はあるけど、あの空気はもうなかった。
正直なところあたしが前にいた時ですら、もうあの空気はとっくになかった。あたしは墓守で、そう多くはない老残の語り部の一人で、成仏する機会を失った地縛霊みたいなものだった。あたしより先人がたくさんいた世界だったのに最古参扱いされる時代になっていた。先人はみんなどこかに、とっくに消えていた。
世界を滅ぼした太陽剣は何くわぬ顔して、とっくに違う会社へ移っていた。
街は奇妙な落ち着きのないカラーリングの武具に身を包んだ戦士たちがうろつく場所になった。

人間でないキャラクターが歩くようになり、あたしの知らない呪文を唱える人がいて、そんなわけで色々変わったもんだから当惑しているわけ。
「Valoriteの鎧なんて恥ずかしくて着れないw」
って言ってた時代の人が今の画面見たら卒倒するんでないか。
すごいよ今の人達のファッションセンス。

と、そんな世界に帰ってきたわけです。
当時とそんなに姿勢は変わってない。もともとぼんやり生きてたから、パッチの影響を個人的に受けることって少ないのね。
もっとも、あたし個人のダメージがないから問題ないんじゃない。ダメージが致命傷になった人がどんどん消えて行くのが、あたしにはダメージだった。
んでまあ、だいたい、あらかた死に絶えた大地に戻ってくると、原生生物並みのしぶとさで生き残っている古い知己があちこちにおり、情報を渡してくれる。
いわく、誰それも復活して云々。
烏猫みたいなどうしようもないのがまさか息を吹き返しているとは思わなかったけど、生きてるらしい。機会が合えば会うだろう。

しかしかつて出会った人たちと再び話をしたくなったとき、どうするとコンタクトを取れるようになるのかね。
別に用があるんじゃないの。一言「いきてたかーげんき?」って言いたいくらいの用件しかない。
昔もそうだったんだもの、今になって急に、一緒に何かするような用事が発生するわけはないんだ。
途方に暮れるね。

#一見ネガですしネガな成分もありますけど、あたし自身はそんなにネガでもないです。

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